マーケティング実践者お悩み3選
私は昨年末、中国新聞社が運営する地域の専門家掲載ウェブサイト「マイベストプロ広島」のプロ認定を頂きました。マーケティング支援のプロとしては初選出ということで、早速さまざまな業態のマーケティング実践者から相談が寄せられています。その中から興味深いものを三つ紹介します。まずは「たくさんマーケティングの本を読み込んで実践しているが効果がない」というもの。詳しくうかがうと、読んだ本の中から気に入った手法のみを抜き出してやっておられたことが判明。ご本人は「いいとこ取り」をされたつもりですが、マーケティングでは厳禁。導入しやすそう、めんどくさくなさそう、今の自分の能力に似合っていそうといったイージーな取り組みは、現状維持バイアスとなります。時には意に沿わぬことにも勇気を持って向き合い、苦手を克服していかなければ、成長は望めません。星野グループの星野佳路代表も「理論はつまみ食いせず100%教科書通りにやってみる」ことを推奨されています。詳しくは中沢康彦著「星野リゾートの教科書/日経BP社」をご覧ください。15年以上読まれ続けている名著です。次のご相談。マーケティングを本格的に実践するにあたり、スキルを備えた人材を新たに雇用したいのだが、無名の小さな会社なので苦戦している、とのこと。今いる人材を育ててはどうでしょう。マーケティングの専門家を招き、月イチで全社員を対象としたマーケティングセミナーを実施するのです。半年もすれば強い関心を持つ社員が一定数現れますので、その中から選任者を選べばOK。モチベーションアップにも効果絶大です。ちなみに私のクライアントのある企業はこの方法で社員12人のうち2人がマーケティング専任(うち一人はコピーライター)となり、さらに女性2人をトレーニング中。社員の意外な一面を発見できて面白いですよ。最後に起業1年の方からのお悩み。SNS広告やウェブ集客のいずれもコンサルを名乗る業者に大金を投じたのだが全く効果がなかった、というもの。退職を機にやりたかった仕事を立ち上げたばかりで、退職金も相当注ぎ込まれたようです。自称コンサルたちの作った広告やサイトを見せてもらったところ、ターゲットや強みが曖昧で競合との差別化も全く図られておらず、フォーマットに情報を流し込んだだけで短時間に大量生産できる類のものと推測できます。ロゴデザインやコピーも同様に、AIを使ったのでしょうか、一見オシャレだけれど深みのない平凡なものばかり。レスポンスがないのもうなずけます。また、ウェブに加えて名刺、パンフ、看板など、一気に制作するよう促されて素直に従ったと。これはお金がかかるだけでなく、今回のように反応が得られなかった場合、軌道修正が容易ではありません。全てはテストと割り切り、制作物も最小限にとどめるべきでしたね。はやりのSNS広告もマーケティングの手段の一つに過ぎず、過度の期待や業者への丸投げは危険です。もちろん優秀なSNS広告専門家もいらっしゃいますが、市場調査をせずに一方的に制作したり、リスクを伝えない無責任なコンサルは増加傾向にあるようです。新規事業者はもちろんのこと、経営者の皆さんは「カンタン集客」「ラクラク売上UP」というような調子の良い、うたい文句には十分ご注意いただきたい。
プロフィル
小林 カズヒココピーライターやアートディレクターを経て、中四国初の本格的なマーケティングコンサルに転身。中小企業経営者や個人事業者へのコンサルほか、金融機関からの依頼で経営が悪化した企業への助言も実施。これまで数十種の業態のコンサルを手掛け、そのスキルの即効性はコロナ禍でも実証されているという。
マーケティング診断や相談先メール(匿名不可):marketingdefense@harukomania.com