オタフクソース(西区商工センター)は2022年発足の「共創室」が主導し、業界や企業、部署の垣根を超えた新事業や商品開発を強化している。事業化前のものを含めて10プロジェクトを進行中。今夏をめどに地場農家から調味料を受託開発するサービスや、自社調味料を使うレトルト商品などを計画する。食品以外の業界との協業も進める。昨秋策定の中期経営計画のテーマに「食の未来を共創〜共感・連携・イノベーション〜」と掲げた。共創室は新設の共創本部の直轄となり、意思決定のスピードを向上。現在3人体制で、接触した事業者は100社を超える。第1弾は、地場農家から規格外野菜のドレッシング、ソースの開発やマーケティングなどを請け負う「ハレノベジプロジェクト」。原料の配合、品質保持、食品表示、パッケージデザインなどの知見を生かす。小売店との接点を生かし、販路開拓も支援。ソース原料の野菜・果実ピューレの輸入が難しくなる可能性も視野に入れ、農家との接点や加工技術を確保する狙いもある。23年にトマト農家のアグライズ(東広島市)を含む数社と試作を行い、アグライズからは正式に受託し商品化を進めている。将来は自社で製造まで請け負える体制を目指す。看板商品のお好みソースをベースに、初のレトルト商品としてハヤシライスソースも計画。製造は外注。ホームページの人気レシピを基に開発し、ソースのお好み焼き以外への使い方の訴求にもつなげる。このほか、韓国の新興企業と連携し、大豆からタンパク質を分離する際に発生する大豆ホエーから酢を作る取り組みも進める。また、アウトドア用品ブランドとのコラボ商品を6月中に発売予定。相手ブランドの世界観をパッケージに反映し、新たなファンの獲得をもくろむ。栗田翼室長は「世の中がめまぐるしく変化する中、当社のリソースと顧客課題をつなぎ合わせ、未来の新たな価値をつくりたい。条件で折り合わず実現しなかった例もあるが、互いが熱意と尊敬の念を持つことが重要だと感じている」と話す。
担当記者:大島