社会保険労務士法人サトー(中区中町、木本美智代表)が母体となって昨年12月に立ち上げた(株)ゼネラルは6月、AIを活用した給与計算アウトソーシング事業で本格始動する。熟練した社労士の経験をAIに落とし込み、顧客の給与処理や勤怠管理などのバックオフィス業務を正確かつ効率的に代行。本業に集中してもらえる体制をつくるほか、将来は収集したビッグデータを基に自動で人事課題を分析・可視化する仕組みの構築を目指す。ゼネラルはサトーと同所在地で、社長はサトー経営執行役員の今田真吾氏が務める。サトーも給与計算の代行は請け負っているが、サービスの全国展開やAI開発に向けた資金調達のために株式会社を設立した。両法人とも5月決算。次期が始まる6月以降に、サトーからの出向という形で7人がゼネラルで勤務する。給与や勤怠に関わる業務は各企業が独自の方法で管理していたり、近年はクラウド型のソフトを活用したりといったケースが多いが、いずれも数値やデータが正しく入力されることが前提となっている。実際には作業者のヒューマンエラーや法律・税制などの知識不足などからミスが起こるため、社労士によるチェックが重要となる。そうしたプロセスをAIが行うことで顧客の負担が減るだけでなく、これまで外注の依頼に十分に応えられていなかった社労士側にも余力が生まれるという。今田社長は「給与計算はデリケートなので、ミスがあるとトラブルや離職のきっかけになりかねない。また最近は後継者不在によるM&AやベンチャーのIPOも目立つが、労務管理に問題が見つかると売却価格に影響が出る場合も。実際の社労士によるサポートと合わせ、単なる代行ではないと訴求していく」と話す。まずはサトーと給与業務代行以外で取引がある企業へ提案し、今後は税理士、県外の同業、保険業、人事系テクノロジー企業といった提携先の顧客23万社超へ展開する。費用は社員1人当たり月1000円程度。各種データの活用に向けた準備と投資も進める。直近では例えば、顧客の給与水準や労働時間を業界平均などの数値と比較するリポートの提供を始める予定。また将来的には、それらの情報からAIが採用や教育も含めた人事課題を分析できるよう、システム開発を加速する計画だ。1985年3月創業のサトーは今年で40周年。同事業で昨年度、県が急成長企業の創出を目指す「ひろしまユニコーン10」に採択されている。
担当記者:近藤