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全国的に伝統工芸士の後継者が先細る中、呉市川尻町に根付く経済産業大臣指定伝統的工芸品の川尻筆に2月、若手の二人の伝統工芸士が誕生するというニュースが舞い込んだ。これで川尻筆の技を継承する伝統工芸士は4人になり、将来へ新たな明かりをともした。江戸後期から職人の技を伝える文進堂畑製筆所で修業してきた4代目の畑幸壯(こうそう) さん(36)は、全国でも最年少の伝統工芸士という。父親で3代目の義幸さんが長年の研究と工夫を重ね、現代の最高級羊毛筆を確立した筆作りのそばで育った。幼少期から良い原毛に見て触れ、そして良い仕事は特有の〝音〟で分かるという、その記憶は何事にも代え難いものだったろう。22歳で弟子入りし、若くして全ての技を習得するという異例の才を発揮した。もう一人。湊毛筆製作所の湊宗道さん(41)は筆職人の祖父に憧れ、父親の達哉さんの背中を見て育ち、伝統工芸士の仲間入りを果たした。二人には父親が伝統工芸士という共通項があり、仕事場が遊び場という生活と筆作りを一つにして伝統工芸の技法を代々つないできた。県内にある筆の産地は全国ブランドの熊野筆と、川尻筆の二つを合わせて全国生産量の8割を占める。分業体制を敷く熊野筆に対し、川尻筆は一人の職人が仕上げまで70を超える全工程に携わる。毛先が割れず墨含みの良い〝練り混ぜ〟という技法が特徴で、高級書筆を得意とする。

AIと筆地域の特産を生かして町を盛り上げようと、川尻毛筆事業協同組合(坪川竜大理事長=坪川毛筆刷毛製作所社長)は昨年10月、川尻筆を地域団体商標に登録。これを起爆剤とし、書筆以外でも商標を活用する商品開発を検討している。組合の前理事長で、川尻に筆作りをもたらしたと伝わる上野八重吉の5代目で、やまき筆菊壽(きくじゅ)堂を経営する上野龍正さんは、「昨春は弘法大師生誕1250年を記念し、野呂山の山頂にある筆塚で初めて筆供養を開いた。今年も山開きに合わせ4月21日に開く。筆はいま日常生活の中で過去のものになりつつあるが、AIが世界を席巻するいまこそ、日本語の機微、素晴らしさを繊細に表してくれる筆の実力を見直し、筆で文字を書く体験を広めていきたい。読み書き、そろばんを基本としてきた日本人の知恵は、産業の発展や文化の多様性を根底で支えてきたと思う。創造性を養う上でも五感を動員する読み書きが有効ではないか。筆産地の熊野や川尻の小学校などで筆作り体験学習を地道に続けている。子どもたちも地域の文化と伝統を知ることで誇りや自信が育まれ、成長へつながると確信している」筆作りを取り巻く環境は次第に厳しさを増す。中国製の攻勢に加え、良質な天然毛の確保は年々難しく、職人の高齢化と後継者難が深刻化している。しかし、ここでへこたれる訳にはいかない。成果を挙げるまでに長い時間はかかるが、いまが読み書き教育の出番ではなかろうか。湊毛筆製作所代表者の湊達哉さんは、「技は見て、盗んで、覚えて初めて自分のものになる。やり方は教わることができるが自分で工夫し、考え、繰り返し鍛錬するほか道はない」芸術、学問、スポーツなどの全てに共通する基本なのだろう。近道はない。

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