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人はどうすれば笑顔になれるだろうか。中区竹屋町の診療所「ほ-むけあクリニック」院長の横林賢一さん(46)は医療と街づくりという一見、かけ離れた命題を通して笑顔の根っこに何があるのか、考え続けてきた。誰でも病になって病院を訪れるが、同クリニックは診療のない9月7日の午後、小学1、2年生を対象に〝おしごと体験〟イベントを開いた。コロナ前までは年1回、近隣の小学生に問診やエコー、レントゲンなどの体験、クリニック見学を行っていた。今回は近隣のかとう歯科医院、すずらん薬局と組み、医療に携わるそれぞれの仕事を体験してもらった。横林さんは、「子どもたちが楽しみながら社会の仕組みを学び、大切な在りかを発見できる。それが将来の仕事の選択肢の一つになり、事業所にとっては存在を知ってもらう機会になる。おしごと体験は医療分野にとどまることなく、街のさまざまな事業所に声をかけ、仕事の体験を通じて子どもと大人がつながり、笑顔のあふれる温かい街を願っている」広島大医学部の学生の頃、映画やTVドラマになった赤ひげ先生、ドクターコトーのような町医者に憧れていた。卒業後、研修先の福岡の病院で米家庭医の講演を聴く。理想に描いていた医師の姿があった。地域住民の健康に寄り添う総合診療医への道を進む決心がついた。沖縄・西表島の診療所や米オレゴン健康科学大の研修を経て、日本で最初の家庭医療専門医になるが現場を経験する中、学びを深めたいと在宅医療のフェローとして訓練も受ける。2010年に広島に戻り、広大病院家庭医療専門医養成プログラムを立ち上げた後、米ハーバード公衆衛生大学院(HSPH)へ留学。そこでソーシャルキャピタルや行動経済学を学び、どうすれば人は笑顔になれるかと自分自身に問うようになった。「病と向き合って生活している人を診る。人は人とのつながりがあって初めて笑顔が生まれる。診療しているとSDH(健康の社会的決定要因)の大切さを実感させられる。病は、患者だけのせいではない。健康づくりを妨げているのは何か。例えば、貧困や低学歴など社会格差による不健康、病を解消することはできないか、そうした目的を定めHSPHへ向かった」1年間学んで持論を確証。ためらいなくアクセルを踏む自信ができたという。17年、夢だったカフェ併設の有床診療所として現在のクリニック開設にこぎ着けた。病気の有無に関わらず無料で相談できるまちの保健室、こども食堂、認知症カフェ、離乳食教室など、誰もが気軽に集える場を目指す。笑顔を生む街づくりへ、カフェのイベントを企画運営し地域とのつながりを〝処方〟するリンクワーカー、塚本真理子さんの存在を欠かすことはできない。家庭医は、生まれて死ぬまでのライフサイクルに照らしながら想定される〝つまずき〟ポイントも念頭に置く。団塊世代全てが後期高齢者になる25年問題が目前。住み慣れた地域で最期まで生活できるよう、リンクワーカーの出番はますます増えてきそうだ。「医師に相談できないと思っていることが、実は不調の原因だったりすることもあるのです。一人一人の困り事に誠実に対応し、心がほっこりと笑う、そうして笑顔が連鎖する街にしたい」新しい光が差してきた。
担当記者:藤井