リフォーム事業で地場大手に成長したマエダハウジング(中区八丁堀)の前田政登己社長(59)は、「いつの間にか下りのエスカレーターに乗り、ついに経営の終点に着く。現状維持の意識では後退。常に前へ向かうチャレンジ精神でぶつかっていく。まして危機の時こそ変革のチャンス。不屈の闘争心で立ち向かえば、やがて答えは出る」自らの経験と重ね、次代が何を求めているのか、いま何をすべきかと考え尽くす。27歳の時に勤めていたリフォーム会社の社長が夜逃げし、残された案件を放り出すことはできないと独立を決意。ここが原点になった。2008年秋のリーマンショック、14年の広島土砂災害、18年の西日本豪雨による顧客の被災、コロナ禍など、何度も苦境に立たされた。「そのたびに本を開いたが、直接的な答えは書かれていない。しかし、たくさんの言葉を読み解き、気付いたことがある。住宅事業を真ん中に据えて顧客満足、社員の幸福、地域貢献を実現する理念や、わが社の存在意義に立ち返るしかない」不況に耐えられる弾力性を備える。新会社設立やM&Aによって不動産、新築、1級建築士事務所、不用品買取店などに領域を拡大。何かが落ち込んだときにカバーできる体制を敷くとともに、相互送客や設計施工ノウハウの向上などでグループのシナジーを発揮する。感染予防の緊急事態宣言下には柔軟な働き方を推し進め、DXによる業務効率化につなげた。昨年11月に廿日市市に開いた水回り専門店を含め県内7店を展開。注文住宅や法人向け改修の中島建設(福山市)の全株式を取得しており、福山店を開く予定。府中町のショールーム移転も検討する。前12月期グループ6社の連結売上高は前年比6%増の45億3000万円で過去最高を更新し、今期は50億円を目指す。前期決算には計上していないがM&Aで新たに3社を加え、30年のグループ10社、社員300人、売上高100億円へまい進する。「いつも思うことは〝で、どうする〟の精神。何をするかはむろん、誰とやるかが最も大切。会社の財産は人。自分の意見や気持ちを率直に表現できることが生産性を高め、新しい発想を生む。部門、グループ間の連携をもたらす。男性育休取得100%など働き方改革を整え、働きがい改革に挑戦中。誰もが参加できるよう忘年会は昼に開いた。社員が先日、息子をこの会社で働かせたいと言ってくれ、うれしかった」業界では建築確認申請の特例縮小によるコスト増や省エネ性能審査の厳格化が4月に始まり、2025年ショックとして取り沙汰される。同社はグループの総務や書式の統一、現場監督の相互派遣などで業務を効率化。主力事業では引き続き、断熱・耐震・防音の性能向上リノベーションを積極的に提案する。「自宅内でのヒートショックによる脳梗塞や心筋梗塞を無くし、安心安全な暮らしを提供したい。また、東広島市西高屋を人が集う町にリノベーションするプロジェクトでは第1弾のコミュニティーハウスを3月に開設。全国で増え続ける空き家を活用した室内農業の定額サービスなども構想し、シマウマの白黒柄のように社会課題の解決と経済成長という二つの要素を両立させるゼブラ企業を目指す」やりたいことは尽きない。
担当記者:吉田