その時の、市の着眼に間違いはなかった。昭和時代に17年をかけた「西部開発事業」は1966年に庚午、草津、井口沖の海面埋立事業に着手し、82年に竣工。過密化する都心の再開発や交通渋滞の緩和、流通機能高度化を目的に事業費1056億円を投じ、総面積328㌶を造成した。埋立竣工後、地区内の事業所数と従業員数は大きく増えた。2021年には事業所数856、従業員数1万9328人(事業所統計より)。西日本有数の流通団地へと発展を遂げる。地元卸を中心に組合員203社を擁する(協)広島総合卸センター(伊藤学人理事長)が今年12月で創立50周年を迎える。国の高度化資金を導入する集団化事業で団地づくりを引っ張ってきた。竣工から40年余。施設老朽化が進み、16年に「卸団地の将来に向けての提言書」を市へ提出。10年間にわたる議論を重ね、ようやく3月に市が「商工センター地区まちづくりビジョン」をつくった。団地中心部の広島サンプラザ(経過年数39年)、市中小企業会館(同45年)と総合展示館(同44年)などの主要施設を改修して再配置する。広島の「西の玄関口」として「MICE(マイス)」施設を新設するほか、陸と海の玄関を備える交通機能の強化、国内外から観光客を呼び込む、にぎわい創出の三本柱を建て、一体的な街づくりを目指す。まず、耐震性が確保されていない中小企業会館・総合展示館の移転更新のため「MICE施設」(展示室約6000㎡と会議室約800㎡)を第五公園へ整備し、その後に展示館解体。同公園を改修。中央卸売市場に併設するにぎわい施設の整備と歩調を合わせて進め、おおむね10年以内に整備する。展示室、会議室規模は需要調査を踏まえて算出。今後の需要に応じながらMICE施設の拡張を検討する。次に、MICE施設による民間投資誘発などを踏まえ、ホテルなどが整備されるタイミングで中小企業会館・本館を解体。「ホテル」などの整備後に広島サンプラザ(本館)を解体。おおむね15年以内の整備を見込む。地区内の事業者や住民が日常的に交流する「アクティブセンター」などを一体的に整備。ペデストリアンデッキは駅からMICE施設→ホテル→草津漁港へ延伸する。市が進める広島型の新たな公共交通システム構築の動きと歩調を合わせながらヒトやモノの動きを支える交通機能づくりに取り組む。地区内の多様な交通モードの利用や地区外施設とのアクセス、飲食店や宿泊地などを含めたシームレスな移動を実現するMaaSの取り組みを推進。自動運転や超小型モビリティ、「空飛ぶクルマ」などの新技術を活用した交通DX・GXについても関係者と連携しながら将来的な課題に挙げる。草津漁港へ観光船を誘致して海からのアクセスを確保しにぎわい創出につなげる狙いだ。まずは宮島や原爆ドームなどを結ぶ社会実験に取り組み、次に不定期観光船の運航によって周辺観光地とのネットワーク拡大を図る。来街者向けの飲食・物販施設などが立地できるようAゾーンの規制緩和を必要に応じて段階的に取り組むとしている。時代が移り、比較はできないが、17年で1056億円を投じた西部開発事業。完成から40年余が過ぎた。官民一体で知恵を絞り、商工センター地区が一層元気になる仕掛けを講じてもらいたい。

担当記者:本山

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