4月24日、地下1階食品フロアを改装オープンした。新駅ビル開業など広島駅周辺の再開発が進む中、駅前デパ地下の存在感を高める。来春には2階部分がペデストリアンデッキでつながり駅と直結。集客力や話題性のあるテナントを相次ぎ導入しており、駅前デパートの意気込みを聞いた。

―今回、スイーツを中心に新規8店舗を導入。狙いも教えてください。焼き立てのフィナンシェを提供するコウノトリベイクラボや新鮮なフルーツタルトのハナフルなど〝映える〟スイーツ、和菓子の旬月神楽、カフェが手掛けるロビーコーヒーなど、地元人気店の力も借りて展開する。ワイン専門店やオーガニック専門店も誘致。「ララ・いいもの広島」プロジェクトで開発・発掘した広島の逸品も含め、バイヤーが県内外のグルメを集めたコーナー「福屋フードセレクション」を初めて設けた。スイーツはこれまで百貨店が強いギフト用が中心で、〝自分ご褒美〟のような日常使いの品ぞろえが乏しかった。今回は、こうしたニーズに応える人気店を集め、強化した。1999年4月に開業以来、初の大規模改装を2024年秋から段階的に進めており、地階は総菜売り場を3月20日に先行して刷新。焼き肉や焼き魚の総菜専門店、韓国の家庭料理が味わえる「妻家房」など8店を導入し、約2倍の品ぞろえにした。周辺のオフィスワーカーや住民、駅の利用客など再開発で多様化する幅広い層のニーズを取り込みたい。

― 昨秋に大型スポーツ専門店、4月に女性誌販売部数全国1位の雑誌ハルメクの実店舗も導入しました。マツダスタジアムに続き、昨年2月にサッカースタジアムが開設。広島は野球、サッカー、バスケットとプロスポーツの街として一段と観戦客が増え、スポーツを身近に親しむ環境が整ってきた。スポーツ関連を強化する必然性を感じており、カープグッズ売り場はタオルやTシャツなど福屋限定品をそろえ、根強いファンにしっかり応えている。中四国初のハルメクは主力購読者層が来店層とも重なり、実店舗へ集客するシナジーを高める。

― 新駅ビルの商業施設ミナモア開業をどう受けとめていますか。ミナモアとは互いに魅力を高めながら、地元百貨店として少しほっとできるスペース、ゆったり過ごせる役割を担いたい。八丁堀本店はラグジュアリーブランドを扱うが、駅前店は日常生活に寄り添う〝ちょっといいもの〟にアンテナを張った品ぞろえにする。SCで扱うブランドにもチャレンジし、ハイブリッド型で相乗効果を狙う。百貨店は、販売員と会話を楽しんで買い物をしていただく存在価値が根底にある。一人一人の顧客を大切にし、細かな要望に応えられる丁寧な接客を尽くし、何度も足を運んでもらえる店を目指している。

― 入居するエールエールA館へ26年に市中央図書館が入ります。改装は図書館の移転が契機になった。駅前店フロアは約4割減となるが利用客のニーズに合わせてテーマごとに店舗を集めたフロア構成に再編成しながら26年春に全面開業の予定。エールエールA館地下2階〜地上11階のうち、福屋広島駅前店はもともと地下1階〜地上9階だったが地下1階〜地上5階に集約する。11階のレストランフロアは従来通りの営業。6・7階は書店やクリニックなどエールエールA館のテナントで占め、図書館は8〜10階に入る。図書館を目的に、買い物以外の来店動機が生まれる。足を運んでいただく理由は多ければ多いほどいい。〝ここにしかない〟の品ぞろえと、来店したついでに買い物を楽しんでもらえるよう工夫していきたい。

― 駅前店のアクセスが改善します。南口広場周辺の各施設へのペデストリアンデッキが整備される一環で、来春を目途に、新駅とエールエールA館2階部分がフラットにつながる。駅改札口から地下道や階段を使う従来ルートの距離200㍍が半分以下に縮まり、駅中央に隣接予定のにぎわい空間から、わずか36・5㍍の至近距離に。開業から27年目にして名実ともに〝駅前店〟と胸を張れる。デッキから館内を通り猿猴川護岸に直接アクセスできる歩行者通路も整備される。駅前周辺の回遊性が一段と高まると期待している。

担当記者:藤井

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