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国内大手カーメーカーによる型式認証不正に関して
カーメーカーのOBとして今回の問題について私見を述べたい。型式認証とは、最低限度の法規・技術要件・安全性を満たした製品に与えられる認証で、国内では国土交通省(以下、国交省)が管理し、認証を受けた製品は個々の検査が省略される。もし個々に検査を行った場合、膨大な手間を要し、衝突試験では実施後に使用できなくなるなど、工業製品に必須の仕組みである。自動車に関する規格は技術の専門家である国内カーメーカーのエンジニアが協力して作成している。にもかかわらず今回、規格と異なる試験を行って不正申請を行った次第で、誠に遺憾である。専門家が同等あるいはより厳しい試験を行ったということで、製品の性能や安全性に懸念はないが、規格を作った当事者によるルールの逸脱はエンジニアとしても許されることではない。今回の不正は国交省の指示による各社自主検査の結果を報告したもので、ここ10年の自動車性能の急速な進歩に、会社組織や開発システム、エンジニア意識などの変革が追い付かなかったという以下の背景があると思われる。一つ目は認証というタイミング。今に始まったことではないが、量産寸前で発売までの日程は決まっているにもかかわらず、残課題は年々深刻化してきた。胃から汗が出るほど、プレッシャーは半端ではない。二つ目が開発日程の短縮化と試作車両の削減。モデルベース開発などにより以前に比べてはるかに短い期間での開発が実現し、国際競争力の源泉となっている。また以前は開発段階ごとに試作車を造り、問題を顕在化させ解決してきたが、試作車を仕立てるには億単位のお金がかかる。想定外の問題が生じた際に是正する期間が残っていないのも事実である。問題点の顕在化と解決が先送りとなり、認証車両で最終確認する例もあると思われる。三つ目がエンジニアの意識。型式認証が大事なことは分かっているが、優先すべきはお客さまである。より良い物をお客さまに提供しようとするあまり、あろうことか認証対応を簡略化してしまったようにさえ感じられる。社内他部門や経営トップ、さらには国交省との風通しも要改善と思う。四つ目が自動車技術の急速な進化。認証項目や手順を今後も最適化し続ける必要がある。型式認証の内容は国交省が最終的に決めるが、検討の段階で国内大手カーメーカーも主体となって活動している。今回を最後のチャンスに、世界最高の自動車品質・性能と、最も効率的な認証で世界をリードするよう、得意なすりあわせでカイゼンにチャレンジし続けてほしい。
プロフィル

平田 栄志自動車メーカーで40年弱、CASE関連などエレキ開発のエンジニアを務め、技術企画として戦略調査分析してきた。本質を捉えた市場分析と現場現物の戦略立案を心掛ける。