米オープンAI社の対話型生成AI「チャットGPT」をはじめとする言語生成AIの進化と普及は、目覚ましいものがあります。これはマーケティング活動においても武器となり得ます。 使い方はさまざまですが、サントリーの事例がまず参考になります。サントリーは新商品のCM制作にチャットGPTを活用しました。チャットGPTに「CMのキャスティングは、誰がお薦めですか?」と質問し、AIが提案したキャストと企画内容を基にCMを作ったそうです。すると、奇想天外な内容のCMが完成し、大きな話題になりました。 言語生成AIとは、膨大なテキストデータを学習し、自然で文脈に沿った文章を生成できる技術です。代表的なものはチャットGPTの他に米グーグル社の「ジェミニ」などがあり、多くは無料や安価なプランから利用を開始できます。ユーザーが「プロンプト」と呼ばれる指示文を入力すると、AIはそれに基づいて文章の作成、要約、翻訳、アイデア出し、質疑応答など、さまざまなタスクを実行します。これをマーケティング活動に活用する方法はたくさんあります。比較的簡単に取り組める方法を紹介します。

キャッチコピー・広告文のアイデア出しと作成支援

 「商品の魅力が伝わるキャッチコピーが思いつかない」、「リスティング広告の短い文章が難しい」といった場合に使えます。商品やサービスの特徴、ターゲット、伝えたいメッセージなどをプロンプトで指示し、コピー案を複数生成させます。あるいは現在使用しているコピーを提示し、より魅力的な表現や異なる切り口での言い換えを依頼することもできます。 AIが生成した案をそのまま使うのではなく、あくまで「たたき台」として捉えることが重要です。生成された複数の案の中から、自社のイメージやターゲットに響くものを選び、さらに磨きをかけて効果的なコピーを完成させましょう。

ブログ記事・SNS投稿コンテンツの企画と作成補助

 ウェブやSNSでの情報発信は、顧客との関係構築やブランディングにおいて重要です。しかしながら、継続的に質の高いコンテンツを作成するのは大変な作業です。 このような場合に、AIはネタ探しから構成案作成、文章作成補助まで、幅広くサポートしてくれます。業界や商品、ターゲットの関心事などを、入力し、記事やSNS投稿のテーマ案を複数出してもらいます。そして、内容を確認・修正してAIに文章を作成させます。出力された案を専門的な知見で確認し、加筆・修正する必要がありますが、価値のあるコンテンツとなる可能性があります。

プレスリリースの草稿作成

 プレスリリースの構成案の作成や文章の草稿作成に役立ちます。まずはリリースの基本的な構成(タイトル、リード文、本文、問い合わせ先など)に沿った骨子を作成させます。これを伝えたい情報を箇条書きでAIに与え、文章を完成させます。 このように幅広い広告活動に利用できますが、機密性の高い情報や個人情報などは入力することは避けましょう。AIはアイデア出しからコンテンツ作成、顧客対応、情報収集まで活用できます。重要なのはAIを「万能の魔法使い」ではなく、あくまで「アシスタントや相談相手」として捉え、その能力を最大限に引き出すことです。またAIが生成したものを鵜呑(うの)みにせず、人間の知識、経験、創造性を掛け合わせることで、真に価値のある広告活動が実現できるでしょう。

プロフィル

宮田 庄悟 (みやた しょうご)1956年1月3日生まれ、和歌山県出身。早稲田大学を卒業し、79年4月に電通入社。東京、ニューヨーク、北京、ロンドンでマーケティング、イベント、スポーツ業務に従事。「ラグビーワールドカップ2019組織委員会」の広報・マーケティングなどを担当。20年4月から現職。

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