マリモホールディングス(以下HD)の子会社で国内不動産事業を統括する「マリモ」の社長に、昨年8月に就任した。同HDはこれまでグループ会社の社長に次々と社員を登用してきたが、祖業の分譲マンション事業を担うマリモの社長に創業家以外が就くのは初めて。グループ全体のかじ取りは引き続き同HDの深川真社長が担い、グループで2030年をめどにビジネスとソーシャルビジネスの割合を50対50にする「ソーシャルビジネスカンパニー」を目指す。

―マリモの強みや優位性の源は何だと捉えていますか。

当社は1970年に設計会社として創業以来、〝ものづくり〟の精神や技術力、優れた用地選定などを強みに事業を展開してきました。累計開発実績は全国489棟3万1623戸。オフィスビルや商業ビル、賃貸マンション、アパート、ホテルなど多彩な案件を手掛け、不動産総合デベロッパーへと成長。2025年7月期の売上高はマリモ単体で683億円、経常利益36〜38億円を予想しています。当社は分譲マンションのイメージを強く持たれていますが、大都市圏を中心に展開している収益不動産事業や賃貸住宅事業などが同売上高の半分近くを占めています。幅広い事業に社員一丸となってチャレンジする総合力を一番の強みとしつつ、設計会社発祥ならではの品質を厳しく担保していきたいと考えています。

―それぞれの事業の方針は。

上場を見据え、分譲マンションは年間800戸の販売ペースを想定しています。供給エリアについてもこれまで積極展開してきた地方都市から、7大都市に力を入れる方針にシフトしていきます。効率の良い大規模開発の動きが強まっていますが、ニーズがあれば小さめの土地でも手間を惜しまずに事業化したい。少子高齢化が進む中、徒歩圏内で生活できるコンパクトシティーがポイントに。購入層のニーズを捉え、オンリーワンの住まいを提供していきます。収益不動産ではインバウンド需要が伸びており、広島の案件を含む複数のアパートメントホテル用地を仕込んでいます。賃貸マンションでは当社が23〜24年に開発した「アルティザ」の9物件を対象に、今年1月にマリモ・アセットマネジメントが私募ファンド第1号の運用を開始。国内の機関投資家や複数の事業会社が出資しており、総資産額は約100億円に上ります。そのほか投資用賃貸マンション事業も年々伸長。壁式鉄筋コンクリート造の都市型賃貸マンション「ルオーレ」、間取りや設備にこだわった木造アパート「ムーブ」など、オーナー、居住者ともに満足していただける住まいづくりを続ける方針です。

―長年にわたりマンション事業をけん引されました。

人生で最も大きな買い物を扱う仕事に興味を持ったことが、不動産業界に入ったきっかけです。全国各地を飛び回り多くのプロジェクトに携わってきた一方で、2020年からのコロナ禍などの苦難も経験。しかし、分譲マンション、収益不動産、賃貸住宅など事業分散によってリスク軽減を図り、さまざまな困難を乗り越えてきました。今後も、経済動向や顧客ニーズをいち早く察知し、幅広い事業を柔軟に展開していきたいと思います。

―地元広島で力を入れることは。

資本業務提携を結んだイオンモールの商業施設敷地内で当社の分譲マンションを計画中です。また、準備組合が33年度の完成を予定する西広島駅南口西地区の市街地再開発事業で特定業務代行者の構成員に選ばれるなど、地元の街づくりにも積極的に関わっていく方針です。マリモグループの非不動産事業とも連携を一層強め、グループシナジーを発揮していきたいと思います。

プロフィル

たにもと かつひでマリモ社長。1971年12月31日生まれ、大阪府出身。不動産デベロッパーで約10年間勤務した後、2006年マリモに入社。主にマンション事業を担当し、17年取締役に就任。21年から取締役常務執行役員(マンション事業本部長兼務)、23年から取締役専務執行役員(同)を務め、24年8月から現職。趣味はゴルフ、車(ドライブ、F1観戦)。

担当記者:吉田

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