トランプ関税が世界を揺るがし、米国市場を得意とする日本の自動車産業も対応におおわらわ。マツダは5月12日、2025年3月期の決算説明会でトランプ関税の影響を踏まえた今期の方針を発表。サプライヤーや販売店の事業を守るため原価・固定費の圧縮などあらゆる対策を講じ、販売台数の維持を目指すと宣言した。前3月期の米国販売実績は輸出を中心に過去最高の43万5000台に上った。世界販売の3分の1を占めるだけに米国の関税政策が重くのしかかる。トランプ1期目に、米国法人を率いていた毛籠勝弘社長は、「今、大きな危機に直面している。しかし経営のレジリエンシー(困難を乗り越え回復する力)を高める絶好機でもあり、前向きに捉えることもできる。米国で成功したレシピを日本などアジア市場に落とし込み、反転を狙う」5月12、13日に本社工場の従業員が一同に会し、エディオンピースウイング広島で社内研修会を開いた。現場主導へと組織風土を改革する狙いだ。どんな困難にぶつかろうと〝人〟が最も重要な資本と言い切る。幾度も苦難を乗り超えてきたマツダの真価を発揮してもらいたい。

ポテンシャル採用

海外生産を強化しアパレルメーカー事業が好調なアスティ(西区商工センター)は、潜在的な能力や意欲のある人材を対象とする〝ポテンシャル採用〟を始めた。昨年は異業種から20代後半の3人を採用。今年も5人を計画している。新卒者は毎年数人を採用。中途採用は業界に通じる経験やスキルを備えた即戦力を中心に行っていた。しかし人口減が進む中、アパレル経験者獲得も年々難しく、年齢構成のバランスを考慮すると若手の補完に迫られていた。新井宏社長は、「教育体制を整え、業界が異なっても本人の意欲さえあれば、中長期にわたって活躍できる人材を育てていきたい。中国、ベトナム、バングラデシュと海外生産拠点を擁し、今後も一定数のグローバル人材を確保する必要がある。語学力も大切だが、それにも増してチャレンジ精神にあふれた人を求めている」若手登用にも積極的に取り組む。今年度は入社3年目を含め5人(女性2人)の20代係長が誕生。「ポストが人をつくるとも言われる。まずは責任を持たせ、やらせてみることで成長の機会につなげてもらう。ポテンシャルを引き出していく社内環境を醸成していきたい」

うれしいひと言

支えるべきはずの手が暴力を生んではならない。厚生労働省の調べで、施設職員による要介護者への虐待相談・通報件数が3年連続最多、家庭内でも11年連続で増加。何よりも理解と尊重が求められる。6月1日に自社運営4カ所目のグループホーム(佐伯区隅の浜)を開く森信建設(中区富士見町)は、入居者が健やかに暮らせるよう細心の注意を払っているという。職員の研修はむろん、地元食材を使う出来たての料理や機能訓練、定期往診、訪問看護師によるケアなどを充実。煩雑な手書き記録をペーパーレス化して空いた時間は、入居者とのコミュニケーションに充てる。社長の森信秀樹さん(72)は、「職員がグループホーム間で異動するとき、入居者がその職員に付いていきたいと言ってくれた。ついのすみかとして、最も大切な人と人の触れ合いこそ原点だと思う。みんなで心を磨いていく不断の努力、積み重ねを大事にしたい」広島JC理事長や広島経済同友会の筆頭代表幹事などを歴任し、多彩な人脈を築いてきた。明朗快活で屈託がなく、世代を超えてファンは多い。

一緒に食べる日

〝うどんと和菓子の専門店〟を創業来、ちから(中区鉄砲町)が6月で90周年を迎える。今は市内中心に直営27店舗を構え、幅広い年齢層から親しまれる〝定番の店〟として根付く。うどんと和菓子を合わせて注文する食文化は全国的にも珍しいという。市民にはなじみの光景だが、マスコミにも取り上げられるなど転勤族や観光客を驚かせる。2019年に「うどんと和菓子を一緒に食べる日」(6月10日)に登録された。21年から記念日キャンペーンを始め、今年も6月1〜10日に実施する。対象のめん類と和菓子を各1品ずつ同時注文すると90円ほど値引きする。Wチャンスで、アンケートに答えると抽選で合計90人に食事券などが当たる。

女子和太鼓チーム

なぜか和太鼓の音に心を揺さぶられる。精密機械製造などのキャステム(福山市)は社内に有志を募り、女性の和太鼓チーム「彩雲」を結成。2月に開いた創業55周年イベントで華やかに勇壮に和太鼓を演奏し、みんなの喝采を浴びた。戸田拓夫社長の発案をきっかけに昨年10月、20〜50代の有志9人で発足した。同市出身で和太鼓奏者の原田嘉子さんに師事。周年イベントでデビューを目指し、90分の練習を毎月2〜4回、約4カ月重ねた。経営管理部人事総務課の信岡邦昭上席課長は、「全従業員の3分の1を占める女子社員の活躍はそのまま社内の活気につながる。家庭の事情などで夕方以降の練習が難しい人もいるため、関係部署と調整して平日午後の就業時を練習に充てることにしました。目標に向かって汗を流し、デビューの反響は上々。みんなが生き生きと活躍できる職場づくりを目的に、今後もいろいろと企画を立てます」

挫折乗り越え活躍

働き手不足の今こそ多様な人材に目を向けたい。渡辺運輸(安芸区)は引きこもりだった若者らを相次ぎ採用し、やがて次世代を担う人材が育ってきたという。4年前。就労に不安を持つ若者を支援する広島地域若者サポートステーションの存在を知り、職場見学や就業体験の受け入れを始めた。現在、同施設から入社した6人が働く。運転手や倉庫作業のほか、人材派遣事業のさまざまな取引先から適性に合う業務を用意する。毎日声を掛けて様子を見守り、気温差で体調を崩しやすい人は季節の変わり目に休暇を与えるなど工夫を凝らす。業務スキルよりも、うそをつかないといったモラル教育を重視し、派遣先とも綿密に情報共有して時には叱ってもらう。真面目な勤務態度で社内表彰を受けるドライバーや、派遣先に請われて正社員登用される例も出てきた。人事担当の仙波忠昭統括本部長は、「挫折を乗り越えて自信を取り戻し、生き生きと活躍する姿が何よりうれしい。ぐんぐん成長していく姿に刺激を受け、自主的に資格を取得したり、クメール語を覚えて外国人実習生の育成に当たったりする社員もいる。会社全体の雰囲気が良くなり、業績も上がっています」

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